「データ分析をしてみたけれど、思ったほど評価されなかった」
「分析はしたのに、結局何も変わらなかった」
IT企業や外資コンサルとしてデータ・AI案件に関わるなかで、こうした経験をしてきました。
そしてよくよく分析すると、
“高度な分析手法”の問題というより、もっと手前のところでつまずいていることがほとんどです。
この記事では、現場で本当によく見かける
「データ分析の落とし穴」7つ
を、20代社会人の方向けにできるだけ具体例とセットで整理していきます。
データ分析スキル全体の学び方を整理したロードマップも用意しています。
「どこから勉強を始めればいいか?」を俯瞰したい方はこちらもあわせてどうぞ。
→ 社会人のデータ分析ロードマップ|Excel→SQL→BI→Pythonで半年〜1年の全体像
落とし穴① 目的がふわっとしたまま、とりあえず分析を始める
よくあるパターン
- 「とりあえず売上データを分析してみて」
- 「AIとかデータで何か分かったことを教えて」
と言われて、とりあえずグラフやピボットを作り始めてしまうケースです。
なぜ危ないのか
- 「何を決めたいのか」「何が変われば成功なのか」が曖昧だとどれだけ頑張っても“良い分析”にならないからです。
- 結果として、
- グラフのスクショだけ大量
- スライドはあるけどメッセージがぼやっとしている というアウトプットになりがちです。
防ぐためのミニチェック
分析を始める前に、次の3つだけは紙やメモに書き出しておくのがおすすめです。
- 誰の悩み・問いに答えるのか? 例:「営業部長」「マーケ責任者」など
- この分析のあとに、どんな意思決定が行われるのか? 例:「どのチャネルに予算を配分するか」「どの店舗に人員を増やすか」
- 今回の分析の“ゴールのイメージ”は何か? 例:「〇〇という仮説を検証する」「A案とB案のどちらを優先すべきかを示す」
落とし穴② データの定義・範囲があいまいなまま進める
よくあるパターン
- 「売上」の定義が人によって違う (商品売上だけ?物流費込み?返品はマイナス?)
- 期間の切り方が人によってバラバラ (請求日ベース/出荷日ベース/注文日ベース…)
- 顧客IDがきれいに一意になっていない
なぜ危ないのか
- 見かけ上の数字は合っているのに、意味が違うという状態になり、
- 部門間で「その数字は信用できない」となってしまいます。
防ぐためのミニチェック
分析に使うデータについて、
- この「売上」は、どのタイミングの数字か?
- この「顧客数」は、何を1人とカウントしているか?
- 除外しているデータはないか?(社内利用/テスト/返品…)
を簡単にメモや現場の人と認識合わせをしておき、必要に応じて資料の最初に「前提・定義」スライドを1枚入れるだけで、かなりモヤモヤが減ります。
落とし穴③ 集計単位を間違えて“数字が合わない”沼にはまる
よくあるパターン
- 明細データと集計結果で数字が合わない
- 同じ「売上」なのに、部門レポートと自分の集計で数値がずれる
よく見る原因は、
- 明細+マスタをJOINした結果、同じ売上行が重複してカウントされている
- 日次・月次・年次の切り方が微妙に違う
- 「税抜き」「税込み」「割引前」など単価の定義が違う
といったものです。
防ぐためのミニチェック
- 「1レコードが何を表しているのか」を確認する (1行=1注文?1商品?1顧客?)
- JOINする前後で、
- 件数
- 合計金額 を簡単にチェックしておく
- 既存の公式レポートと、1つの月だけでよいので数字を合わせてみる
「100%完璧に合わないとダメ」ではなく、「どこまでが許容範囲で、どこからが危険か」を把握しておく
落とし穴④ 外れ値・欠損値をそのままにしてしまう
よくあるパターン
- 売上が「1億円」と「0円」が混ざっているのにそのまま平均を取る
- 欠損(NULL/空欄)が多い列で集計しているのに特に気にしていない
なぜ危ないのか
- 一部の極端な値が平均を大きく歪めてしまう
- 欠損が多い列をそのまま使うと分析結果を誤解しやすくなる
防ぐためのミニチェック
- まずヒストグラムや箱ひげ図などで、分布の形をざっくり確認する
- 「売上1億円」のような値があった場合は
- 本当に起こり得る値なのか
- データ入力ミス/システム不具合ではないか を疑う
- 欠損がどのくらいあるかをざっくりカウントし、
- 行ごと除外するのか
- 代入するのか
- そもそもその列は使わないのか 方針を決めておく
落とし穴⑤ 相関を「因果関係」として語ってしまう
よくあるパターン
- 「広告費と売上に相関があった → 広告費を増やせば売上が伸びるはず」
- 「残業時間が多いほど売上が高い → 残業を増やせば売上が上がる」
なぜ危ないのか
- 相関はあくまで 「一緒に動いているように見える」 だけで、「片方がもう片方を引き起こしている」とは限らない からです。
- 実際には、
- 第三の要因(キャンペーン/季節要因など)が両方に影響している ケースも多いです。
防ぐためのミニチェック
- 報告・資料の中では、
- 「〜かもしれない」
- 「〜という可能性がある」 と言い切りすぎない表現を意識する
- 「本当に因果と言えるか?」を考えるために、
- 期間を分けてみる
- 別の切り口で確認してみる など簡単な追加分析をしてみる
- 最後のスライドで 「今回の分析で言えること/言えないこと」 を分けて書く
落とし穴⑥ 結果を“盛りすぎる”/“ネガティブすぎる”レポートになる
よくあるパターン
- 数字上は差がそこまで大きくないのに、「劇的な改善」「大きなインパクト」と表現してしまう
- 逆に、問題点ばかりを強調してしまい、「じゃあ何をすればいいの?」が見えないレポートになる
なぜ危ないのか
- 一度でも「盛りすぎレポート」を出してしまうと、その後の分析への信頼が落ちるからです。
- ネガティブ情報だけを並べると、現場の人から「結局何がしたいの?」と距離を置かれます。
防ぐためのミニチェック
- グラフには可能であれば数値ラベルを付ける → 「見た目のインパクト」と「実際の数字」がズレないようにする
- 最後に必ず 「提案したいアクションは何か?」を1〜3個に絞って書く
- 結果を説明するときは、
- 事実(数字)
- 解釈(こう考えられる)
- 提案(こう動くのはどうか) の3階層に分けて話す
落とし穴⑦ 分析して終わりで、“アクション”に落ちない
よくあるパターン
- スライドは作ったが、会議で眺めて終わり
- 「面白い結果ですね」で終わり、具体的な施策に繋がらない
なぜ危ないのか
- ビジネスの現場では、分析そのものではなく「行動が変わったかどうか」が価値だからです。
- 分析だけが増えると、「データ分析=時間がかかる割にあまり役に立たないもの」という印象を持たれてしまいます。
防ぐためのミニチェック
- 資料の最後に必ず**「次の一歩案」を具体的に書いておく**
- 例:
- 「来月のキャンペーンでは、AとBの2パターンをテストする」
- 「次の四半期で、このチャネルの予算を●%シフトする」
- 例:
- 実行した施策について、
- いつ
- どんな指標で
- どう振り返るか をあらかじめ決めておく
明日からできる「落ちないための3つの習慣」
最後に、ここまでの内容を明日からの行動に落とすための3つの習慣をまとめておきます。
① 分析を始める前に「目的メモ」を書く
- 3行でよいので、
- 誰の意思決定のための分析か
- どんな問いに答えたいのか
- ゴールのイメージ をメモに書いてから着手する。
② 「前提・定義」スライド/メモを1枚作る
- 使っているデータの
- 範囲
- 期間
- 定義(売上・顧客・案件…)
- 除外しているデータ を簡単にまとめておく。
③ 「言えること/言えないこと」を分けてまとめる
- 分析結果から
- 数字として言えること
- こう考えられる、という解釈
- データからは言えない/追加検証が必要なこと
- この3つを分けて整理しておくことで、 誇張しすぎない、信頼されるレポートに近づきます。
「落とし穴は分かったけれど、そもそものスキルをどう伸ばせばいいか知りたい…」という方は、
データ・AI学習のステップ別記事も参考になると思います。

データ分析は、「高度な手法の知識」よりも「実務の地に足のついた感覚」のほうが現場では大事です。
この記事で紹介した落とし穴を避けつつ、自分なりのチェックリストを少しずつアップデートしていけば、20代のうちから「安心して分析を任せられる人」というポジションに近づいていけるでしょう。


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