業務改善のアイデアを出してほしいと言われたのに、何も浮かばない。毎日同じ作業をしているのに、どこを変えればよいか分からない。アイデア集を読んでも、自分の担当業務に当てはまらない。
最初に見たいのは、新しい取り組みではなく、毎回くり返している作業です。
この記事でわかること
- 業務改善のアイデアが出ないときに、最初に見る作業
- 毎日の作業から改善点を探す5つの観点
- くり返している作業を1つ変えると、その手間が毎回減ること
結論:アイデアは考え出すより、定常的な作業の中から探す
業務改善のアイデアは、新しく考え出すより、定常的な作業の中から探す方が見つかりやすくなります。
定常的な作業は、毎日・毎週・毎月など、決まった間隔でくり返している作業のことです。
自分も改善点を探すときは、定常的な作業を一番に見ています。
定常的な作業を、次の5つの観点で見ていきます。
- 転記する:同じ内容を別の表に写している
- 抽出する:条件に合うものを毎回手で抜き出している
- 確かめる:同じ数字を目で見比べている
- 待つ:データや返事が届くまで、手が止まっている
- 判断する:決まった基準で、数字を見て対応を決めている
アイデアが出ない理由:新しい取り組みの中から探している
アイデアが出ないときは、探す場所を「新しい取り組み」から「定常的な作業」に移します。
自分は電車や日常で、ふとした時に「これ改善できるんじゃない」と考えることが多いです。
業務改善のアイデアが出なくて困った経験もあります。そのときも、日常生活の中の不便や工夫をヒントに考えています。
アイデアが出にくいときは、一般に次の3つが重なっていることがあります。
新しいことを考えようとしている。
「業務改善」と聞くと、ツールの導入や新しい仕組みを思い浮かべがちです。何もないところから考えると、手がかりがなく止まります。
慣れた作業の手間に気づきにくい。
毎日やっている作業は、手順が体に入っています。手間がかかっていても「そういうもの」と感じて、改善の候補に上がりません。
アイデア集の例が、自分の業務と合わない。
よく紹介されるアイデアには、テレワークや外注など、会社全体で取り組む例が多くあります。担当者1人では決められないため、自分の業務に置きかえにくくなります。
改善点を探す5つの観点:転記する・抽出する・確かめる・待つ・判断する
改善点は、定常的な作業の中で「毎回、人の手と目でやっている部分」に出てきます。
5つの観点ごとに、事務の作業でよくある例と、改善の方向をまとめます。
| 観点 | 事務の作業でよくある例 | 改善の方向 |
|---|---|---|
| 転記する | システムの数字をExcelの表に写す | 写す元のデータを、そのまま使える形にする |
| 抽出する | 毎月、フィルターで対象者を抜き出す | 条件を決めて、毎回同じ形で出るようにする |
| 確かめる | 2つの表の金額を目で見比べる | 確かめる点を決め、差だけを関数で出す |
| 待つ | 他部署の数字が届くまで報告書を止める | 届く日とファイルの形を先に決める |
| 判断する | 数字を見て、担当者が対応を決める | 基準を書き出し、データで判断できる形にする |
この表では、改善の方向がどれも「毎回やる作業を、1回決めれば済む形にする」ことになっています。
1. 転記する
転記は、ある表やシステムの内容を、別の表に書き写すことです。写すたびに時間がかかり、写し間違いも起きます。
毎月の転記を減らす手順は、次の記事にまとめています。
2. 抽出する
抽出は、条件に合うものだけを抜き出すことです。条件が毎回同じなら、条件を一度決めておくと、毎回の操作を減らせます。
月次でデータをもらって、Excelのフィルターを使って対象者を抽出する業務は、ダッシュボード化すれば一撃でできると思いました。
ダッシュボードは、グラフや表を1画面にまとめ、数字をひと目で見られるようにしたものです。ダッシュボードにするとき、作る前に確かめておくことは、次の記事にまとめています。
3. 確かめる
同じ数字を、2つの表で目で見比べている作業です。見比べる行が多いほど時間がかかり、見落としも起きます。
件数や金額の合計など、確かめる点を決めて差を関数で出しておくと、差が出たところだけを見れば済みます。
4. 待つ
データや返事が届くまで、作業が止まっている時間です。手を動かしている作業ではないため、改善の候補として気づきにくい観点です。
毎月同じ相手を待っているなら、届く日とファイルの形を、先に相談して決めておけます。
5. 判断する
決まった基準で、数字を見て対応を決めている作業です。
データで判断できる業務に関しては、改善できると思いました。そう思ったのは、工数(作業にかかった時間)の管理のように、アウトプットがデータの結果であるものを見たときです。
判断の基準が担当者の頭の中にだけあると、ほかの人には同じ判断ができません。まず基準を書き出すと、ほかの人も同じ数字で判断できるようになります。
見つけ方の手順:定常的な作業を書き出し、5つの観点で印をつける
改善点は、1週間分の定常的な作業に5つの観点で印をつけると、作業の名前で見えてきます。
手順は次の5つです。
- 1週間分の定常的な作業を書き出す
- 月に1回の作業は、1か月分を思い出して足す
- 作業ごとに、当てはまる観点に印をつける
- 印がついた作業から1つ選び、変えることを1行で書く
- 前後の担当者に確かめてから、次にその作業をする日に試す
作業は「受注データを転記する」のように、何を・どうするかで書きます。
書き出し方の細かいコツと、候補が多いときにどれから手をつけるかの決め方は、次の記事にまとめています。
具体例:営業事務の定常的な作業に印をつける
以下は説明のための架空の例です。営業事務の担当者が、定常的な作業に印をつけたとします。
| 定常的な作業 | 当てはまる観点 | 改善の候補 |
|---|---|---|
| 毎朝、受注システムの件数を日報に写す | 転記する | システムから出したデータで日報を埋める |
| 毎月、顧客リストから更新月の顧客を抜き出す | 抽出する | 更新月の条件を決め、同じ形で出るようにする |
| 毎週、請求の金額を2つの表で見比べる | 確かめる | 合計の差を関数で出し、差があるときだけ見る |
| 毎月、他部署の数字を待って報告書を止める | 待つ | 届く日とファイルの形を、先に相談して決める |
この表では、定常的な作業に観点を当てるだけで、作業ごとに改善の候補が1つずつ出ています。
現場目線の注意点:見つけた改善点は、前後の担当者に確かめてから変える
見つけた改善点は、その作業の前後にいる人に確かめてから変えると、ほかの人の作業を止めずに済みます。
自分の判断だけで、作業のやり方を変えない。転記した表や抽出した一覧を、別の人が使っていることがあります。形を変えると、受け取る人の集計が合わなくなります。変える前に「この表をどう使っていますか」と聞きます。
最初の改善を大きくしない。システムの入れ替えのような改善は、承認や予算が必要で、動き出すまでに時間がかかります。自分の作業の中で、次の回に試せる大きさから始めます。大きな改善案は、候補として書き残しておきます。
業務への着地:定常的な作業を変えると、毎回の手間が減っていく
定常的な作業はくり返す回数が多いので、1回分の手間を減らすと、その分が毎回戻ってきます。
改善点が見つからないまま放っておくと、同じ転記や抽出を毎月くり返します。担当が変わるときには、その手作業ごと引き継ぐことになります。
架空の例で、Before/Afterを比べると次のとおりです。
| 場面 | Before | After |
|---|---|---|
| アイデアを求められたとき | 新しい取り組みを考えて手が止まる | 定常的な作業を5つの観点で見る |
| 毎月の抽出 | 毎回フィルターをかけ直す | 決めた条件で、同じ形の一覧が出る |
| 改善の相談 | 「何か良くしたい」としか言えない | 「この作業の転記を減らしたい」と作業名で話せる |
この表では、探す場所を定常的な作業に移したことで、改善の話が作業の名前で進んでいます。
データは、可視化や分析をして初めて情報になると思っています。
まとめ
業務改善のアイデアが出ないときは、定常的な作業を次の5つの観点で見ます。
- 転記する:同じ内容を別の表に写していないか
- 抽出する:条件に合うものを毎回手で抜き出していないか
- 確かめる:同じ数字を目で見比べていないか
- 待つ:データや返事を待って、手が止まっていないか
- 判断する:決まった基準で、数字を見て対応を決めていないか
見つけた改善点は1つだけ選び、前後の担当者に確かめてから、次にその作業をする日に試します。






