分析や集計を頼まれて作ったものを見せたら、「見たかったのはこれじゃない」と言われた。途中で何度も聞き直している。依頼が「売上を分析して」の一言だけで、どこから手をつけるか迷う。
作業に入る前に聞きたいのは、目的・見たいもの・使い道・データ・期間の5つです。この5つが、分析・集計で何を作るかの条件、つまり「要件」になります。
この記事でわかること
- 分析・集計の依頼で、最初に聞く5つの質問
- 質問ごとの聞き方の例と、聞かないと起きること
- 最初に5つ聞くと、聞き直しと作り直しが減ること
結論:作業の前に、目的・見たいもの・使い道・データ・期間を聞く
分析・集計の依頼は、作業に入る前に5つの質問で要件をそろえると、作り直しが減ります。
依頼を受けたら、自分が最初に必ず聞くのは次の5つです。
- 目的は何か
- 何が見られれば良いのか
- その後に何に使うのか
- どんなデータで分析するか
- どの期間を分析するか
分析で大事なのは、示唆を提示するところまでを実施することです。 自分も、集計した数字を渡して終わりにせず、示唆の提示までを行います。5つの質問は、その示唆を依頼者の目的に合わせるためのものです。
この記事では、分析・集計を頼んできた人を「依頼者」と呼びます。依頼者は、社内の上司やほかの部署のこともあれば、お客様のこともあります。
自分も、社内の依頼とお客様からの依頼の両方で、要件を聞いてきました。
作り直しが起きるとき:単位・見せ方・目的が、依頼者の考えとずれている
単位・見せ方・目的が依頼者の考えとずれていると、見たい分析結果になりません。
依頼の言葉は、短いことが多いものです。「売上を分析して」には、目的も見たいものも、使うデータも書かれていません。書かれていない条件を作る側が想像で埋めると、依頼者の考えとずれます。
自分にも、お客様や社内の依頼者にとって、見たい分析結果にならなかったことがあります。原因は3つありました。
- 欲しい単位が足りなかった
- 可視化の見せ方が違っていた
- 目的がずれていた
単位は、集計の細かさ(月ごと・日ごとなど)や切り口(店舗別・商品別など)のことです。可視化は、数字をグラフや表にして見えるようにすることです。
見せ方は、もっとシンプルに見せるべきでした。
最初に聞いていなかったためにずれて、作り直しになったこともあります。聞いた後に「こういうのも見たい」「あれも見たい」と、見たいものが増えていくこともあります。
単位と見せ方は、2つ目の質問「何が見られれば良いのか」で作業の前に確かめられます。目的は、1つ目の「目的は何か」で確かめます。聞いた後に見たいものが増えたときの対処は、「現場目線の注意点」で書きます。
5つの質問:聞き方の例と、聞かないと起きること
5つの質問は、目的・見たいもの・使い道で「ゴール」を決め、データと期間で「材料」を決めます。
質問は、目的から始めると進めやすくなります。見たいものも使うデータも、目的によって変わるからです。
1. 目的は何か
なぜ聞くか:目的は、分析で何を明らかにしたいかです。目的が分かると、どの数字を見ればよいかが決まります。
聞き方の例:「この分析で、何が分かればいいですか」「いま気になっていることは何ですか」
聞かないと起きること:数字はそろっていても、依頼者の知りたいことに答えない結果になります。
目的を短く書き出してから分析を始める考え方は、次の記事にまとめています。
2. 何が見られれば良いのか
なぜ聞くか:最後に見せるものの形を決める質問です。数字1つで良いのか、推移のグラフか、店舗ごとの表か。どの単位で見たいかも、ここで決まります。
聞き方の例:「最終的に、どんな表やグラフが見られれば良いですか」「どの単位で見たいですか」
依頼者が答えにくそうなら、紙に枠だけ描いて「こんな形ですか」と見せる方法もあります。
聞かないと起きること:欲しい単位が足りない表や、読み取りにくいグラフができます。計算が正しくても、見たい結果として受け取ってもらえません。
3. その後に何に使うのか
なぜ聞くか:目的が「何を知りたいか」なら、使い道は「知った後に何をするか」です。会議で判断に使うのか、毎月の報告に載せるのかで、作るものが変わります。
聞き方の例:「結果は、どの会議や報告で使いますか」「結果を見た後に、何を決めますか」
聞かないと起きること:1回だけのつもりで手作業で作った後に、毎月必要だと分かることがあります。作り方から見直すことになります。
毎月続く集計だと分かったら、最初から繰り返し使える形で作れます。その進め方は、次の記事で整理しています。
4. どんなデータで分析するか
なぜ聞くか:同じ「売上」でも、注文のデータと請求のデータでは、数字が変わることがあります。注文が取り消されたり、請求が翌月になったりするためです。
聞き方の例:「売上は、どのシステムや表の数字を使えば良いですか」
依頼者がデータの場所を知らないときは、「いつもどの報告書の数字を見ていますか」と聞くと、元のデータをたどれます。
聞かないと起きること:作る側が選んだデータと、依頼者がいつも見ている数字が合わず、集計をやり直します。
5. どの期間を分析するか
なぜ聞くか:「最近」「今期」が指す期間は、人によって違います。前年の同じ月など、比べたい期間があるかもここで決まります。
聞き方の例:「対象は何月から何月までですか。比べたい期間はありますか」
聞かないと起きること:期間が違えば、データを取り直して集計もやり直しになります。
4と5は、続けて聞くと自然です。「どのデータの、いつからいつまでを使いますか」と1回で聞けます。
具体例:「先月の売上を分析して」を、5つの質問で作業に変える
5つの答えがそろうと、「分析して」の一言が、何をどこまで作るかの決まった作業になります。
以下は説明のための架空の例です。依頼は「先月の売上を分析して」の一言だけでした。
| 質問 | 依頼者の答え(架空) |
|---|---|
| 1. 目的は何か | 先月の売上が落ちた理由を知りたい |
| 2. 何が見られれば良いのか | 店舗ごとに前年と比べた表1枚 |
| 3. その後に何に使うのか | 来週の会議で、立て直す店舗を決める |
| 4. どんなデータで分析するか | 販売管理システムの注文データ |
| 5. どの期間を分析するか | 先月と、前年の同じ月 |
この表では、一言の依頼が、作るもの(店舗ごとの表1枚)と使う場面(来週の会議)まで決まっています。
聞き終わったら、答えを一文にまとめて依頼者に返します。この例なら、次のような一文です。
「売上が落ちた理由を見るために、注文データで、先月と前年の同じ月を店舗ごとに比べた表を1枚、来週の会議用に作ります」
現場目線の注意点:聞いた答えは、作業の前に文字にして依頼者に返す
聞いた答えを文字にして依頼者に確かめてもらうと、聞き違いが作業の前に見つかります。
口頭で聞いたまま、作業に入らない。聞いた側と話した側で、覚えている内容が違うことがあります。上の例のような一文をチャットやメールで送り、合っているかを返してもらいます。
聞いた後に見たいものが増えたときは、すでに提示できている内容とそうでない内容を切り分けます。そうすることで、どこからが追加の依頼かを確認できます。
答えが出ない質問を、空欄のまま進めない。依頼者も、目的や見たいものを決めきれていないことがあります。その場合は「たとえば、こんな表でどうですか」と案を出して選んでもらいます。
空欄のまま作ると、出来上がってから「違う」と言われやすくなります。会議に間に合わず、依頼者の判断が遅れることもあります。
業務への着地:最初に5つ聞くと、途中の聞き直しと作り直しが減る
最初に5つを聞いておくと、作業の途中で聞き直す回数と、出来上がった後の作り直しが減ります。
自分が聞き漏らして困ったのは、その都度依頼者に聞くことになったことです。聞きながら進めるので、追加のコストがかかり、信頼を損ないます。
架空の例で、Before/Afterを比べると次のとおりです。
| 場面 | Before | After |
|---|---|---|
| 依頼を受けたとき | 一言の依頼のまま作り始める | 5つの質問で要件をそろえる |
| 作業の途中 | 分からない所をその都度聞く | そろえた要件に沿って進める |
| 見せたとき | 「見たかったのはこれじゃない」 | 確かめた内容どおりのものを渡す |
この表では、聞く時点を作業の前に移したことで、途中の聞き直しと見せたときの作り直しが減っています。
良くなるのは、作る側の時間だけではありません。依頼者は頼んだものを予定どおりに受け取れるので、次の判断に進めます。
まとめ
分析・集計を頼まれたら、作業の前に次の5つを聞きます。
- 目的は何か
- 何が見られれば良いのか
- その後に何に使うのか
- どんなデータで分析するか
- どの期間を分析するか
前の3つでゴールを、後の2つで材料を決めます。聞いた答えは一文にまとめて依頼者に返し、合っているかを確かめてから作業に入ります。





